
詐欺の相手に暗号資産を送ってしまったあと、「送った暗号資産はどこへ行ったのか」「追跡すれば取り戻せるのか」と考える方は少なくありません。
検索すると、資金追跡や追跡ツールという言葉が多く見つかります。
暗号資産の資金追跡は、ブロックチェーンに残っている送金の記録をたどることです。記録から分かることは多くありますが、記録だけでは分からないことも同じくらいあります。その境目を知らないまま依頼や支払いを急ぐと、期待と結果が大きく食い違うことがあります。
この記事では、暗号資産の資金追跡でわかること・わからないことを分けて整理し、依頼や相談の前に手元でそろえておく情報をまとめます。
DataProは、暗号資産(仮想通貨)や投資サイトのトラブルに限らず、SNS投資詐欺やロマンス詐欺、副業詐欺など、オンライン上の詐欺被害全般のご相談を受け付けています。追跡で何が分かりそうかを知りたい段階から、ご相談いただけます。
暗号資産の資金追跡とは、ブロックチェーンの記録をたどること
ビットコインなどの暗号資産は、送金の記録がブロックチェーンと呼ばれる仕組みに残ります。金融庁のウェブサイトで公表されている調査研究報告書(2019年)は、一般的なブロックチェーンでは、送金元・送金先・送金金額などのトランザクションの内容が全員に公開されると説明しています。
資金追跡は、この公開された記録を使って、自分が送った暗号資産が、送金先のアドレスからさらにどこへ移ったのか、その送金経路を順に確認していく作業です。
銀行振込とは違い、送金の記録そのものは誰でも見られる形で残っている点が特徴です。
公開された記録は、閲覧用のウェブサイトなどで確認できます。
ただし、表示される内容の読み取りには慣れが必要で、見た目だけで判断すると誤解することもあります。
資金追跡でたどれるのは「アドレスとアドレスの間のお金の動き」です。アドレスの持ち主が誰かは、記録には書かれていません。
送金の記録がどこに残っているか
追跡は、自分が送った1回ごとの送金を出発点にします。そろえておく記録は「追跡の前にそろえておく記録」に一覧でまとめています。ここでは、その記録がどこに残っているかを確認します。
取引所から送った場合
国内の取引所から送った場合、これらの多くは取引所の送金履歴に残っています。
送金履歴の画面には、送金日時・通貨・数量・送金先アドレス・TXIDが表示されることが多いため、送金ごとに画面を保存しておきましょう。
取引所で買った暗号資産を送ってしまった直後の整理の順番は、取引所で買った暗号資産を指定先へ送ってしまったときに確認することにまとめています。
個人のウォレットから送った場合
自分で管理するウォレットアプリから送った場合は、アプリの取引履歴に送金の記録が残ります。ウォレットの送金元アドレスと、送った先のアドレスを控えてください。
ウォレットを復元するための言葉(シードフレーズ)や秘密鍵は、追跡のために他人へ渡す必要はありません。誰かに求められても、教えないでください。
複数回に分けて送った場合は、1回ごとにTXIDが付きます。回数が多いときは、日付・数量・送金先アドレス・TXIDを1行ずつ並べた一覧を作ると、追跡の出発点が分かりやすくなります。
アドレスは長い英数字の文字列です。手で書き写すと間違えやすいため、画面の保存と、取引所の画面から写した記録の両方を残してください。
TXIDや送金先アドレスが手元にあるか分からない段階でも、一緒に確認できます。

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ブロックチェーン上で確認できること
ブロックチェーンの記録から確認できるのは、次のような情報です。
| 確認できる情報 | 内容 |
|---|---|
| TXID | 送金1回ごとの識別番号。送金がブロックチェーンに記録されたかを確かめる手がかり |
| 送金元・送金先 | どのアドレスから、どのアドレスへ送られたか |
| 数量 | 送られた暗号資産の量 |
| 時刻 | 送金がブロックチェーンに記録された日時 |
| トークン | 送られた暗号資産やトークンの種類 |
| 資金の移動 | 送金先アドレスから、さらに別のアドレスへ移った記録 |
| 一部の交換の履歴 | 条件によっては、別の暗号資産への交換や、別のブロックチェーンへの移動の記録 |
異なるブロックチェーンの間で暗号資産を交換する仕組みについて、前述の報告書は、方式によっては第三者が双方の取引を紐付けられる場合があると説明しています。ただし、交換や移動の方法はさまざまで、すべての交換を同じようにたどれるわけではありません。
ブロックチェーンの記録だけでは分からないこと
仮想通貨の追跡方法を調べると、アドレスを入力すれば相手が分かるかのような説明を見かけることがあります。
しかし、記録から分かるのはアドレス同士のお金の動きです。次のことは、ブロックチェーンの記録だけでは分かりません。
- アドレスの持ち主が、どこの誰なのか。
- 詐欺をした人が誰なのか。
- 取引所に入金されたあと、取引所の中で何が行われたか。
- 送った暗号資産が、この先戻ってくるかどうか。
前述の報告書は、暗号資産は実世界の本人情報と紐付かない危険性があると指摘しています。また、暗号資産取引所に入った後の移動経路は第三者からは分からないと説明しています。追跡で送金先が取引所のアドレスらしいと分かっても、そこから先の取引の中身や、口座の持ち主は、記録からは見えません。
送金先が取引所のアドレスらしいと分かった場合でも、その取引所の中で誰の口座に入ったのかを外から確かめる方法はありません。
その先の情報を持っているのは取引所で、情報の開示には捜査機関からの依頼などの手続きが関わります。
追跡の結果は、そうした相談の場で経緯を説明する材料として使われます。
わかること・わからないことを並べて確認する

資金追跡でわかること・わからないことを並べると、次のようになります。
| 項目 | わかること | わからないこと |
|---|---|---|
| 送金の記録 | 自分が送った日時・数量・送金先アドレス | 送金先アドレスの持ち主の本人 |
| その後の動き | 送金先からさらに移った先のアドレスと日時 | 詐欺をした人が誰か |
| 取引所への入金 | 取引所などのアドレスと推測されるかどうか | 取引所の中で行われた取引と、その推測の確かさ |
| 交換・移動 | 一部の交換や別のチェーンへの移動の記録 | すべての交換を同じようにたどれるかどうか |
| 結果 | 確認できた移動の流れ | 送った暗号資産が戻るかどうか |
アドレスが取引所のものかどうかの判断も、多くは推測です。前述の報告書は、アドレスの評価は、アドレスをまとめて外部の情報と紐付けて推測する方法などがとられるが、あくまで推測に留まり、使う情報の質や量に大きく左右されると説明しています。
追跡が難しくなる場面
次のような場面では、資金の流れをたどることが難しくなります。
- 取引所に入金されたあと:取引所の中の動きは、外からは見えません。
- 多くの人の暗号資産を混ぜる仕組みを通ったとき:送金元と送金先の紐付けが難しくなります。
- 取引の内容を隠す仕組みを持つ暗号資産に交換されたとき。
- 短い時間に、多数のアドレスへ細かく分けて移されたとき。
前述の報告書は、ミキシングが行われると送金元と送金先の紐付けが行えず、追跡が困難となると説明しています。
また、匿名性を高める技術の開発が進み、暗号資産取引の把握や追跡は困難な状況になりつつあると指摘しています。
確認できるのは、確認した時点までに記録されている移動です。
難しい場面に当たったからといって、それまでにたどれた記録が無駄になるわけではありません。
どこまでたどれて、どこから先が分からなかったのかを分けて残しておくことが、相談するときの説明に役立ちます。
追跡した結果は、何に使えるのか
追跡の結果は、それだけで資金が戻るものではありません。ただ、送金の経緯を説明するための資料として役立つことがあります。結果を受け取るときは、確認できた移動の流れだけでなく、確認できなかった点や、推測にとどまる点が区別されているかも確かめましょう。
| 使う場面 | 伝えること | 一緒に見せる記録 |
|---|---|---|
| 利用した取引所への連絡 | 送金した日時・通貨・数量・送金先アドレス・指示を受けた経緯 | 送金履歴の画面・TXID |
| 警察への相談 | 相手と知り合った経緯と、送金の流れ | やり取りの画面・送金記録・追跡で確認できた移動 |
| 弁護士への相談 | 事実関係と、確認できた点・確認できなかった点 | 経緯のメモ・送金記録・追跡の結果 |
どの場面でも、追跡の結果だけを渡すのではなく、送金のもとになったやり取りや、送金履歴の画面とあわせて示すと、経緯が伝わりやすくなります。
日本暗号資産等取引業協会(JVCEA)は、事件性が認められる場合には捜査が行われることがあり、その際には送金履歴等の証拠資料の保存が重要になると説明しています。また、国内の登録暗号資産交換業者を利用していた場合には、警察から当該事業者に対して情報提供の依頼が行われることがあるとしています。暗号資産交換業者には、本人確認などの対応が制度として求められています。
金融庁は、特殊詐欺などの被害金が暗号資産交換業者あてに送金される事例が多発しているとして、警察庁と連名で、不正な送金への対策の強化を業界団体などに要請したと公表しています。暗号資産に関わる詐欺の手口の全体像は、暗号資産(仮想通貨)詐欺の種類と手口で整理しています。
追跡の前にそろえておく記録

追跡や相談の準備として、次の6点を残しておきましょう。相手から案内されたURLや画面も、あわせて保存しておくと、経緯を説明しやすくなります。
- 送金ごとのTXID。
- 送金元と送金先のアドレス。
- 送った通貨・ネットワーク・数量。
- 送金した日時の一覧。
- 取引所の送金履歴の画面。
- アドレスを指示されたやり取り。
JVCEAは、多くの場合、暗号資産の送金は取り消しできないとしたうえで、状況確認のため、利用している暗号資産交換業者へすぐに連絡するよう案内しています。取引所のアカウントを解約する前に、送金の履歴を保存してください。
TXID・送金先アドレス・送金履歴の画面がそろっていれば、そのままお送りいただけます。




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「追跡すれば必ず取り戻せる」という説明に注意する
被害に気づいたあとに、「追跡すれば必ず取り戻せる」「犯人のウォレットを特定した」などと説明して、先に費用を求める相手がいます。ここまで見てきたとおり、ブロックチェーンの記録から分かる範囲には限りがあり、回収を事前に約束できる人はいません。
依頼や支払いの前に、少なくとも次のことを確かめてください。
- 何を調べて、どんな形で結果を受け取れるのか。
- 調べても分からないことは何か。
- 費用はいつ、何に対して発生するのか。
- 「回収」「凍結」「犯人の特定」を約束していないか。
- 連絡してきた相手が、どこで自分の被害を知ったのか。
- 調査の報告を、どのような形式でいつ受け取れるのか。
説明があいまいなまま支払いを急がされたら、その場で決めずに、やり取りの画面を保存してください。返金をうたう連絡への注意点は、返金をうたう業者から連絡が来たときの注意点で整理しています。騙されたお金について確認できることは、騙されたお金は取り戻せるのか、相談前に整理することにまとめています。
DataProに相談できること・できないこと
DataProは、調査・分析・資金追跡を行う立場から、次の内容をお手伝いできます。
- TXIDと送金先アドレスをもとにした、ブロックチェーン上の資金の移動の確認。
- 確認できた移動の流れと、確認できなかった点の整理。
- 取引所や警察、弁護士へ相談するときに必要な記録の整理。
一方で、アドレスの持ち主の本人や犯人を特定すること、法律相談、相手への返金請求や代理交渉、捜査は行いません。資金の回収や口座・アカウントの凍結をお約束することもできません。確認できる範囲とできない範囲は、ご相談の最初にご説明します。
暗号資産の資金追跡についてよくある質問
暗号資産の資金追跡で、送った先の人を特定できますか。
ブロックチェーンの記録から分かるのは、アドレス同士のお金の動きです。アドレスの持ち主が誰かは記録に書かれておらず、追跡だけで本人や犯人を特定することはできません。
暗号資産は追跡できるのですか。
一般的なブロックチェーンでは、送金元・送金先・数量などの記録が公開されているため、送金先から先の移動をたどれる場合があります。ただし、取引所に入金された後や、暗号資産を混ぜる仕組みを通った後は、たどるのが難しくなります。
追跡すれば、送った暗号資産は戻ってきますか。
追跡で分かるのは資金の動きで、それだけで資金が戻るものではありません。追跡の結果は、取引所や警察、弁護士へ相談するときに経緯を説明する資料として使われます。戻るかどうかを事前に約束できる人はいません。
TXIDはどこで確認できますか。
国内の取引所から送った場合は、取引所の送金履歴に表示されることが多くあります。送金ごとに、日時・通貨・数量・送金先アドレスとあわせて控えてください。
追跡ツールを使えば、自分でも調べられますか。
公開されている記録を見ることはできますが、どのアドレスが誰のものかの判断は推測に頼る部分が大きく、読み取りには注意が必要です。見た内容を記録し、分からない点はそのまま残しておきましょう。
「追跡して必ず取り戻す」という業者から連絡が来ました。
回収を事前に約束できる人はいません。先に費用を求められたら、何を調べ、どんな結果を受け取れるのか、分からないことは何かを確かめてから判断してください。支払う前に、やり取りの画面を保存しておきましょう。
まとめ
暗号資産の資金追跡は、ブロックチェーンに残った送金の記録をたどることです。分かることと分からないことを分けておくと、追跡に何を期待できるかが見えてきます。
- わかること:TXID、送金元と送金先、数量、時刻、トークン、資金の移動。
- わからないこと:アドレスの持ち主の本人、犯人、取引所の中の取引、戻るかどうか。
- 取引所への入金や、暗号資産を混ぜる仕組みを通ると、たどるのが難しくなる。
- 追跡の前に、TXIDと送金先アドレスなどの記録をそろえる。
- 「必ず取り戻せる」と先に費用を求める説明には注意する。
送った暗号資産の行き先が気になるときは、まず手元の送金記録をそろえるところから始めてください。記録がそろっていれば、追跡でどこまで分かりそうかを具体的に相談できます。
追跡でどこまで分かりそうかを知りたい方は、記録をもとにご相談ください。




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